基調講演:テーマ『 公正処理基準を考える 』
-第21回全国大学会計人会サミットに参加して-
今回のサミットは、平成29年11月4日(土)に東京武蔵野(吉祥寺)にある成蹊大学が主催校となり、参加大学29校、約130人の出席により盛大に開催された。当日は当会計人会から、吉田会長、山口副会長と私の3名が参加しました。
さて、本年のサミット会議の基調講演では、「公正処理基準を考える」をテーマとして取り上げ、過去の税務訴訟に係る判例(大竹貿易事件、ビックカメラ事件、オリックス事件他)をもとに、この問題を読み解くという流れで、講演が進められ、その後、このテーマに係るパネルディスカッションが行われましたが、聴衆をも巻き込む、熱い議論が展開されました。
法人税法第22条第4項のいわゆる「公正処理基準」が昭和42年度の税制改正で設けられて50年が経過する一方、現状の会計基準は国際的共通化や会計基準の複線化が進んでいる。別段の定めがされていない場合には、どの会計基準を採用するかにより、異なった課税所得となる場合もあることから、「公正処理基準」と個々の会計基準との関係をどのように見て行けばよいのかという問題が生じている。
近年の判例においては、現行の企業会計基準では「公正処理基準」と認めない画期的な判例が出てきているようで、取引の経済的実質と継続性を重視しつつも課税の公平性のタガを締めており、利益計算が法人税法の企図する公平な課税所得の計算という要請に反しない限りで、課税所得の計算上もこれを是認するとしている。また判断の枠組みにおいては、慣行性が重視され、公表されて間もない新会計基準のような場合には、法人税法の側の判断(立法趣旨)に任されており、司法上は、「公正処理基準」に税法の趣旨・目的を織り込む解釈が支配的であり、近年この傾向が強まっているようです。議論は尽きませんでしたが、 (1)事前確認制度をもうける(2)課税庁が「税会計処理基準」として認めるか否かを公表する、が本テーマでの提言とされました。
その後、サミット宣言を行われて今回のサミットは閉会となり、場所を懇親会場へ移し、参加各大学の会計人会の皆様との懇親を図りました。なお、来年は明治大学の駿台会計人倶楽部が3回目となる主催を行う旨の報告が行われました。
副会長 三浦洋輔